「復讐の掟」についてあれこれ

「復讐の掟」と名のつくタイトルの映画は現時点で5つあります。そもそも大藪春彦が1967年に掟シリーズとして同名の小説を発表してたりします。

勿論、このページではMIMIビデオが1985年1月にリリースした作品についてお話しします。

さて、ストーリーを紹介する前にまずは3人の登場人物を紹介します。

↑主演のジェームズ・イーグルハート(以下:イーグルハート)

↑ジェームズの奥さん役ジェーン・ケネディ(以下:ジェーン)

↑悪役のレオン・アイザック・ケネディ(以下:レオン)


それではストーリーを追っていきます。

ファイティング・マッド!

ベトナム戦争帰りのイーグルハートとレオンがどさくさに紛れて大量の金塊を密輸入するところから物語は始まります。

アメリカ本国に戻った二人は、いかにも悪そうなブローカーと船上で落ち合い、金塊を売って大金を手にしたのです。

しかし、レオンとイーグルハートは速攻で仲間割れ。レオンはイーグルハートを殺害し、海に葬ります。

死んだと思っていたイーグルハートは一命をとりとめ、戦争が終わった事を知らないまま生活をしている日本兵二人だけが住んでいる無人島へ漂着します。

小野田さんもビックリ。

暇を持て余した日本兵はイーグルハートに武士道を伝授します。

イーグルハートはメキメキと強くなり、師匠と並ぶ剣の達人となってしまいました。

イーグルハートは、何とか本国へ戻り、この刀で自分を殺そうとした憎きレオンに復讐をしたくてしょうがありません。

一方、本国アメリカでは大金を手にしたレオンは武闘派マフィアを結成し一気に悪の頂点まで上り詰めていたのでありました。

大金も名声も手にしたレオンは、あろうことかイーグルハートの奥さんジェーンに恋をしてしまいます。自分がイーグルハートを殺害しておきながら、奥さんには旦那は戦死したと嘘をつき、なんとか自分のモノにしようと口説き倒すのです。しかし旦那想いのジェーンはその気は全くなし。しびれを切らしたレオンは、ジェーンと息子ごと自分の別荘に監禁します。

一方、その頃イーグルハートのいる無人島に米国軍が島の調査にやってきました。

ラッキーなことに、イーグルハートは軍に助けられ、日本兵の師匠を置きざりにしたまま、晴れてアメリカに戻る事ができたのです。


本国に戻ったイーグルハートは全てを知ってしまいました。金塊の分け前を独り占めにして自分を殺そうとしたレオンが今ではチャイナタウンのトップに君臨し、しかも自分の嫁さんまでも盗んでいた事を。。。

怒り狂ったイーグルハートは復讐を誓い、嫁と子供を取り戻すべく日本刀を片手にレオンに立ち向かっていくのでありました。

(以下、省略)



どうですか皆様。めっちゃ面白そうな作品だと思いませんか?

ご安心ください。大金をはたいて観る程ではありません。だってこれシリオ・H・サンチャゴ作品ですから。


さて、ここから本題です。

この作品、多くの疑問が残ります。

「なぜビデオパッケージに主演のイーグルハートの表記がないのか?」

「ジャケットにはジェーンが主演と書いてありますが、あくまでもジェーンは助演でしかない」

「ジャケットの絵は、助演悪役のレオンが主役みたいな扱い。しかも嫌われているジェーンとラブラブの状態で、そんなシーンは無い。主役のイーグルハートはザコキャラのごとく、ちっちゃく扱われている」

・・・デタラメだらけじゃんか。もう滅茶苦茶。MIMIの嘘つき!

というのは早合点。

どうして、このようなパッケージになってしまったのか?を順を追って説明したいと思います。長いですよ。


まずは主演のイーグルハートについて紹介します。

70年代にちょっとだけ活躍した俳優さんで6本の映画に出演してます。

70年にラス・メイヤーの「ワイルドパーティー」にチョイ役で出演後、続けて

「恍惚の七分間」に出演。72年R・コーマンの「エンジェルズ/地獄の暴走」で、そこそこの脇役に抜擢。

その後、シリオ・H・サンチャゴと組み3本の主役映画を撮る事になります。

・「SAVAGE!(1973)」

・「Bamboo Gods and Iron Men(1974)」

・「DEATH FORCE(1978)」

 

「SAVAGE!」という作品は残念ながら多分国内でソフト化にはなっておりませんが、イーグルハート主演作品の中ではこれが一番有名かもしれません。この作品の音楽を担当したのが元ラークスのドン・ジュリアンでして、ソウル&ファンク系に詳しい方ならご存知の方もいるかも?この映画のサントラは一時プレミアがつくほどのお宝だったようです。


「Bamboo Gods and Iron Men」は「アイアンマンと不思議な仏像」という邦題でRCAコロンビアからソフト化になっています。行き当たりばったりの展開が如何にもサンチャゴらしい作品です。


そして「DEATH FORCE」こそが今回取り上げた「復讐の掟」なんです。ちゃんとイーグルハートが主役のポスターになってますね。


残念なことに1974年から1978年の4年間のうちに何が起きたのか?という程イーグルハートは激太りしてしまい、その後映画に出演する事はありませんでした(涙)

イーグルハートは、その後悲しい人生を送ったのかと申しますと、そうではありません。

なんと息子のジェームズ・モンロー・アイグルハートがアメリカでブレイクしたのです!

ブロードウェイ・ミュージカルの「アラジン」でブレイクし、強烈なキャラクターが評判となり、ロングラン上演され、2014年トニー賞(助演男優賞)受賞してます。今でもこの人テレビドラマ等で活躍中です。

そしてこのジェームズ・モンロー・アイグルハートの輝かしき初出演作品も「復讐の掟」となっております。


続いてはジェーン・ケネディ。

1970年ミスUSAの大会でオハイオ州でグランプリを獲得。当時のアフリカ系アメリカ人女性がコンテストに参加はまれだったため、インパクトが大きく人気者に。その後モデルのキャリアをスタートさせながら多数の有名テレビ番組に出演し7本の映画に出演。1978年、男性優位のスポーツ界に浸透した最初の女性で、NFL Todayのキャスターとして有名になったそうです。81年には黒人初のPLAYBOYの表紙を飾っています。結構凄い人ですね。


で、最後にレオン・アイザック・ケネディ。

いっぱい映画に出ています。

この人、格闘技系映画の出演やDJ等で有名で歌まで歌っています。

レオンは、なんといっても「復讐の掟」の翌年に公開された「Penitentiary(刑務所)」という作品。刑務所内でボクシングで決着とつけるといった、あしたのジョー的な映画がスマッシュヒット!

この映画はパート3まで作られました。日本ではこのパート3のみソフト化になっておりまして、それが上の画像の一番右の「暗闇のファイター」です。


そして一番大事なこと。。。

実はこのレオンと上のジェーンは、1970年~1982年の間、結婚をしていたのです。


レオンとジェーンは、着実にスターダムを駆け上がり1981年、二人が共演した「復活のテンカウント」が上映された頃は、米国では誰もが知っているカップルとなっていたのでした。


そうなると映画関係者も黙っている訳ありません。レオンとジェーンが過去に共演している作品「復讐の掟」を見つけ出し、1978年に作られた作品というのは無かったことにして1984年に「FIGHTING MAD」とタイトルを変え、しれーっとエクスプロイテッドしたのであります。

そのポスターが↓

プレイボーイのジェーンとPenitentiaryのレオンが共演しているという事を全面に打ち出すといった商魂たくましいポスターの完成ですwww.

また雑誌の切り抜きの記事を見てみると、同時上映がジャッキーチェンの蛇拳だったことが分かります。当時この2本立てを観る事ができたアメリカ人が羨ましいです。

ちなみに他の劇場では「復讐の掟」とサンチャゴの「じゃじゃ馬殺し」と併映されていた記事も発見しました。

もうひとつ申し上げると日本での蛇拳の同時上映は松田優作の「処刑遊戯」。こちらだって負けていませんね。


という事でMIMIビデオもこの「復讐の掟」の版権を入手した時は、1984年作品という最新ヒット作品という事でつかまされてしまった訳なのです。ジャケットのデタラメな解説文等は、ミミとしても悪気はなかったのです。そんなことより大事なのは作品の中身ですね。私はこの作品かなり好きです。


最後に、他国のこの作品のビデオパッケージを紹介して締めくくりたいと思います。

もっと酷い状況ですから!


MIMIビデオ

こちらはMIMIビデオの紹介です。

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